妊娠するまで

妊娠するまでは大変だった。メンタル的に。

 

いわゆる高度不妊治療まではいかずに妊娠はしたが、それでもなかなか結果が出ない時期が長く、病院に通っていることも私と夫は誰にも相談できず(親にすらどうしても言えなかった)、しんどかった。

私は周りの中でも比較的早めに結婚した。その頃は結婚していない友人の方が多かったので、特に何も考えないで暮らしていたが、徐々に結婚する友人が多くなり、そして自分より後に結婚した友人達が次々と妊娠・出産していった。自分と同じ頃に結婚した友人たちからは、第2子の報告が上がるようになっていた。

気付けば友人は独身か、既婚で子供がいるかのどちらかしかいなかった。既婚で子供のいない友人は本当に数えるほどで、私は次第に強い焦りと孤独を感じるようになっていた。私は独身の頃、結婚をすればもう人生のミッションはクリアしたようなものだと思っていたが、そうではなかった。子供を持つ(それも2人以上)ことで、やっとクリアなのだ。しかし独身の友人たちにそんなことを説明しても「でも結婚してるんだからいいじゃん…」と言われるし、すぐに子供ができた友人たちからは「子供持つと人生変わるよ。早く産みなよー」と産みたくても産めない気持ちを理解されず子産みを啓蒙されるし、本当に散々だった。友人たちが出産報告をするたびに「同級生だね」とか言っているのを見るだけで、涙が出た。

夫も同じような感じだったようで、独身の友人からの旅行に誘われなくなったり、良きパパとなり人が変わってしまった子持ちの友人から「お前んちは子供はまだなの?早く持てばいいのに」とせっつかれ、うんざりしているようだった。子供ができなかった一因は、こうした不妊からくるストレスに違いなかった。妊娠できないことを悩みすぎて、さらに妊娠が遠ざかるという悪循環にはまっていたのだ。

親戚はなぜかできちゃった婚が多く、結婚式に行くたびに大体新婦のお腹が大きく、子のいない夫婦で出席しているのは自分たちだけだった。私の両親も夫の両親も私たちに気を遣って、全く子供のことは聞いてこなかったが、少し遠い親戚からは毎回毎回「子供まだなんだよね」と確認されていた。

子供ができるまでは仕事をがんばろうと思い、仕事に邁進していると、「仕事に一生懸命なのはいいけど、プライベートも充実させた方がいいよ」と先輩から言われた。

妊娠しないと、そればかり考え、翌月の予定も怖くて入れられなくなっていることに気付いた。

 

もう、何もかもうんざりだった。

 

そんな時、大学のサークルの後輩の結婚式があり、出席した。大学のサークルは、個性的というかユニークというか、一般社会ではちょっと浮くようなメンバーが多く集まっていた。久々に会うメンバーだったが、それがすごく楽しかった。もちろん既婚者も子供がいる人もいるが、そんなことは関係なく、みんな本当に自分の話しかしなかった。子供は子供、自分は自分といった話しぶりだった。今の自分の仕事、最近のどうでもいい出来事、大学時代の思い出。その時私は突然目が覚めた。私は何をしているんだ。今を生きず、不確定な翌月の予定のことばかり考えては欝々としている。もっと楽しく生きないと人生損だ。そう思い、その月と翌月に飲み会の予定を入れまくったら、なんと妊娠した。

 

目が覚めたのと妊娠との因果関係はまったくもって不明だが、妊娠する前に目が覚めてよかったと思う。翌月のことばかり考えてめそめそしている時に妊娠してしまったら、お腹の子にすがり、何か妊娠がとてつもなく重大なことのように感じ、精神的にももっと揺れてしまったのではないかと思う。今もある意味完全に変な様子にはなっているが、妊活サイトばかり見ていた頃のような宗教じみた気持ちはない。多分。